最近、あちこちで催眠の会が開かれるようになりました。
これだけ増えると、自分が主催する会の特色をはっきり打ち出さないと、埋もれてしまいます。
ちなみに僕が主催する催眠カフェは、「滞在時間や掛ける掛けられるのプレッシャーに縛られず、ふらっと来て催眠話をして、好きなときに帰れる」がコンセプトです(長い)。
そのためには、「あの店に行くと楽しいよね」と言われる何かを打ち出さねば…。
例えば「あそこって場末だけど、行くと面白いよね」と言われる、繁華街の隅でぽつんとネオンを灯すスナックのような。
突然ですが僕には好きなラジオがありまして。TOKYO FMで放送されているスナックラジオという番組で、店主役のリリー・フランキーさんの喋りが面白いのです。アルバイトの女の子をいじり倒して場を盛り上げて。
これだ。楽しい喋りで人が集まるスナックのような場を目指そう。
しかし当日、始まってすぐに悟ったのです。
僕はリリー・フランキーさんにはなれないと…!
喋りが拙い。絶妙の突っ込みなんてできない。そもそも人をいじれない。
この日、4月26日土曜日の新宿界隈で「無謀」という言葉を擬人化したら、おそらくそのまんま僕の姿だったはず。
それでもめげませんでした。せっかく来店してくださる皆さんを楽しませるために頑張らねば。
実は今日を迎えるにあたって、あらかじめ親しい掛かり手さんに相談していたのです。
「楽しんでもらうには、どんな演出をしたらいいかなぁ。たとえば皆で盛り上がれるようなゲームをするとか」
彼女の目は、まるで犯罪者予備軍を見るようでした。
「余計なことは考えずに、西からくる女性にいっぱい催眠を体験してもらったら?」
心温まる忠告を無視して、僕は開始早々、集まってくださった皆さんにへらへらと提案したのでした。
「み、皆で山手線ゲームしましょうか。『パンパン、現象系の名前!』とか。
戻ってきたのは、右目左目合わせて10以上の、冷ややかな視線でした。
「多分すぐ終わるよね」
「俺たちにパンパンってさせたら、次に来るのは『はい掛かります!』だよね」
「いや両手を前に伸ばした時点で、その手を固めるよね」
…結論。
術師さんたちに山手線ゲームをさせてはいけません。趣旨が思い切りずれてしまいます。
ちなみに会場の小部屋には大型プロジェクターがあるのですが、そこにメトロノームが「カチ、カチ…」と揺れる画像を流そうとしたら親しい掛かり手さんに全力で止められたので、無害な清流の映像を流しておきました。
実は林先生のDVDも持ってきていたのですが、言ったら舌を引っ込抜かれそうだったので、ついに言い出せませんでした。
まぁたしかに下手な演出をしなくても、お菓子をつまみながらの談笑はとても和やかで、穏やかな時間がゆっくりと流れていきました。
会話のところどころで、術師さんたちの手が細かい動きをしていて、ああ具体的な催眠の話をしてるんだなと思ったものです。
やはり無理に盛り上げようとしなくても、これで良いのかも…。
ちなみにこの日、前日が誕生日という掛かり手女性さんがいらっしゃいまして、主催から小さなケーキをお贈りしてハッピーバースデーを歌い、ささやかなお祝いをさせていただきました。
途中からお客様が増えました。
西のほうから東京に旅行にいらした掛かり手女性さんと、口から火を吐く架空の生物によく似たお名前の掛け手さんのお二人です。
西の女性さんとは個人的にお会いしたことがあったのですが、そのときは力不足で十分に催眠を楽しんでいただけなかったのですが、今日はベテラン術師さんたちがずらりと揃った空間。存分に体験していただけます。
実際、あまり掛かり慣れていない様子ではありましたが、さすがにレジェンドの方々の技量は素晴らしく、西からいらした女性さんは次第に術にはまっていきました。
「ほら、あの人の顔を見ると笑っちゃいますよ。3、2,1」
パチン!
「きゃははは!」
…巨大な翼で空を飛ぶ架空の生物の名前によく似た掛け手さんは、ダシに使われて複雑そうでした。
しばらくしてお二人は次の会へ。岩手、じゃなかった若手催眠の会へと向かいました。
そうです。この日は複数の催眠の会が目白押しで、僕もくまさんかと思いきやホッピーが本体であるそちらの主催さんに「被っちゃってすみません」と謝ったくらいです。
こんなふうにハシゴしてまで来てくださるのは、本当にありがたいことです。他の会との合間、あるいは前後にふらりと来て気軽に催眠話で盛り上がってくださるのは、当カフェとの理念にぴったりですから。
ちなみに、ファンタジーの世界で時々人間を乗せて空を飛ぶ架空の生物の名前によく似た掛け手さんは、今度お茶が美味しいところでオフ会を主催なさるので、皆さんぜひ参加なさってください。
さて、残ったメンバーの間では、割とディープな話も飛び交っていました。例えば…。
近接する界隈である、ぐりぐらや縄の方たちに催眠に興味を持ってもらうには、アニメやコミックの話題を共通項にすればいいんじゃないか、という話になりまして。
このとき、閉店後に嬉々としてアニソンのイベントに向かった術師さんが語ったのが、
「DIOのザ・ワールドでできることは、催眠でもできる!」
例えばあの有名な、
「『あ、ありのままに起こったことを話すぜ!『俺は階段を昇ろうとしたら降りていた』。あれは催眠でできるよね」
「うんうん」
「でも時間を止めてポルナレフを抱えたまま階段を降りるDIOは、さぞかし重かったろうね」
「たしかに」
その流れで僕が付け加えたのは、
「ゼントラーディの兵士がリン・ミンメイの歌を聴いて体が硬直して武器を落としてしまう、あれって人形化ですよね」
…いまいち反応が悪かったので、バレないように下を向き、こっそり「デカルチャー…」とつぶやいたのは、幸い誰にもバレませんでした。
3時間はあっという間で、普段は掛かり手で掛け手も目指している女性が。レジェンドの手ほどきで初めてトランスを掛けるのに成功したのは、とても微笑ましかったです。
帰り際、皆さんが
「こういうのもいいね」
「平和でいいですね」
と口々に言ってくださったのは、本当にうれしかったです。
そうこんなふうに、少人数で平和で穏やかに、わいわいと催眠の話で楽しんでもらえる場を作りたかったんですよ。実現してよかった。
今回来店してくださった皆さん、本当にありがとうございました。「次はお酒出しちゃおうかなー」と、会場にあったシェイカーをシャカシャカと降り始めた僕を華麗にスルーしてくださって助かりました。
次回は5月21日水曜日の19~21時、同じ四谷の会場でオープンします。皆様のご来店をお待ちしております。
(250426)